第20章 「君の心をさらったその日から**」
は照れて顔を赤くしたが、口元は嬉しそうに緩んでいる。
「そ、そうですか?」
「うん。甘さもちょうどいいし、焼き加減も好き」
鮭も、ご飯も、味噌汁も。
派手さはないけど、どれも落ち着く味だ。
は少し困ったように笑った。
「でも、先生のお家に比べたら……地味ですみません」
その言葉に、思わず箸を止める。
「こういうのが、一番いいんだよ。 毎日食べても、飽きないやつ」
すると、おばあちゃんが、待ってましたと言わんばかりに口を挟んだ。
「だったら、先生。今日も泊まっていってよ。が作るカレーも美味しいのよ」
「えー、じゃあ、泊まっちゃおうかな」
「ちょっと、おばあちゃん! 先生も!」
が慌てて声を上げる。
「先生は忙しいの。迷惑でしょ!」
「え〜? でも、こんなイケメン、毎日でも拝みたいじゃない」
おばあちゃんは楽しげに笑いながら、お茶をすする。
は呆れたように眉を寄せた。
「ヨガの先生はどうしたのよ」
「それはそれ、これはこれ」
「僕よりかっこいいやつなんて、いるの?」
「いるのよ〜。先生とは、また違ったタイプ。 もっとこう……爽やかスポーツイケメンって感じ?」
「ふーん」
「あ、でも……」
おばあちゃんはと僕を交互に見てから、わざとらしく肩をすくめる。
「が選ぶのは、先生の方かしらねぇ」
「も、もうっ! 先生の前で、そういうこと言わないで!」
が真っ赤になって口を尖らせる。
その耳まで赤く染まっていくのを横目に見ながら、僕は思わず口元を緩めた。
おばあちゃんは僕にだけ分かるように片目をつむってウインクをよこす。
(……僕たちの関係、もうバレてるんだけどね)
笑いを噛み殺して、僕は味噌汁を啜った。
それからは、三人で他愛もない話をしながら、箸を進めていた。
――そのとき。
ピンポーン、とインターホンの音が響いた。