第20章 「君の心をさらったその日から**」
「が小うるさいから、もう寝よ〜っと」
「先生、さっきの話……あのことは内緒ね!」
「もちろん」
僕が軽く手を振ると、おばあちゃんは上機嫌のまま部屋を後にした。
残されたが、じとっと僕を見つめてくる。
「……“あのこと”って、なんですか?」
「さーて……なんのことだろ?」
「絶対、私のこと何か言われたでしょ」
頬をふくらませながら、僕の隣にぺたんと座る。
寝癖がついた髪が、まだふわふわ揺れてる。
それが無防備で、可愛くて。
つい、頭に手を伸ばした。
髪を梳くみたいに、ゆっくり撫でる。
「……まあ、ひとつ言えるのはさ」
「君のおばあちゃんには、敵わないってとこかな」
は一瞬、きょとんと目を丸くした。
それから、ふにゃっと力の抜けた笑顔になる。
「先生でも敵わないんですか? じゃあ、うちのおばあちゃん最強ですね」
その笑った顔を見たら、僕も口元が緩む。
指での髪を弄びながら、つい調子に乗ってしまった。
「おばあちゃんも面白いし、この家、居心地いいし――」
「このまま僕、の家族になっちゃおうかな。 そうしたら、いつも一緒にいれるよ」
「おばあちゃんにもご両親にも、『の彼氏です』って言っちゃう?」
「……」
……あれ?
返ってくると思っていた反応が来ない。
照れて真っ赤になるとか、慌てて「な、なに言ってるんですか!?」とか……
そういうの、くると思ってた。
は少し考えるように間を置いてから、
「……そ、それはまだ……そんなこと言ったら、おばあちゃん、毎日大騒ぎで……大変かも、です」
少し困ったように笑って、そう言った。
(……なんで、そんな顔をするの?)
(さすがに、一六歳の子に“家族になりたい”は重すぎた?)
胸の奥で、何かが小さく引っかかる。
「冗談だって。 が言いたいタイミングでいいよ」
わざと明るく言って、撫でていた手を自然に下ろす。