第20章 「君の心をさらったその日から**」
最近のは、前よりずっと自分の気持ちを言葉にしてくれるようになった。
『……先生と、ふたりになれるところ……行きたい、です』
千葉の港で、恥ずかしげに……でも一生懸命に伝えてくれた。
あの時、は本当は怖かったはずだ。
でも、僕は嬉しくてたまらなかった。
同時に――
ぞくっとした。
君の初めてが、僕の手の中に落ちてくる。
その事実にどうしようもなく高揚した。
『先生がいない間、ずっと、寂しかった』
『こんな自分が、やなんです……っ』
なんて、泣きながら本音をぶつけてきたり。
が泣いてるのに。
が自分を責めてるのに。
僕は君の弱音を吐く姿が――僕だけのものになったみたいで、満たされた。
『先生と同じ、“呪術師”でありたい』
泣きながらも、真っ直ぐにそう言ってくれた。
呪術師が何を背負うか、どんな地獄を見るか――
はもう、薄々知ってる。
怖いはずだ。
痛いのも、失うのも、置いていかれるのも。
それでも。
あれは、これからも僕の隣で歩いていきたいという覚悟だった。
彼女の心と体。
これから先、彼女が歩いていく時間。
そこに、僕の影響が確かに息づいてる。
……はずなのに。
どこかで、まだ足りない気もして。
(もっと、欲しいなんて……)
そう考えた、そのとき――
襖がかすかに軋む音がした。
僕とおばあちゃんは、同時にそちらを見る。
「……二人で、なに話してるの?」
がひょこっと襖から顔を出して、こちらを覗いている。
寝起きのせいか、まだぼんやりしてる。
「あ、~、もう起きて大丈夫なの?」
「うふ、先生と大人のは・な・し」
「……何そのテンション……」
は顔をしかめながら、僕たちのほうへ歩いてくる。
そして、その視線がテーブルの上のグラスに止まった。
「あ!おばあちゃん、また飲んでる! 今日はお医者さんにも控えてって言われたばっかでしょ?」
「……あら、そうだっけ?」
おばあちゃんはわざとらしいほど視線を逸らし、気まずそうに笑った。
そして、空いたグラスとノートを手に立ち上がる。