第20章 「君の心をさらったその日から**」
「ずっと立ち止まってたが、ようやく前に進んでくれたような気がしてね」
「それに、先生や伊地知さんと一緒にいるあの子を見てると……」
「照れたり、焦ったり、嬉しそうにしたり、困ったり……あんなふうに、素直に感情を出すを見るの、本当に久しぶりで」
おばあちゃんは、僕の方へ視線を向けた。
「先生のおかげだよ。 これからも、を公私共々よろしくね」
「ん?」
おばあちゃんはニヤニヤしながら、続けた。
「もう、誤魔化さなくていいのよー」
「の彼氏って……先生でしょ?」
やっぱり、気づかれてたか。
この人、初めて会った時からどこか鋭いと思ったんだよな。
「僕は隠すつもりはなかったんだけどね……がどうしてもって言うからさ」
わざとらしく肩をすくめてみせると、おばあちゃんは吹き出すように笑った。
「あはは。 あの子、あれで隠してたつもりなのかしら? が先生を見る目、恋してるって感じでバレバレなのに」
「あ、先生がうちの孫にデレデレしてんの見るのも、面白いけど」
「え? 僕も?」
「若いっていいわねぇ。尊いわ~」
おばあちゃんはグラスを軽く揺らしながら、くすっと笑った。
「……先生が、の心をさらったんだねぇ」
心を、さらった――
そんなふうに言われたのは、はじめてだった。
むしろ、さらわれたのは僕のほうだ。
最初は気になっただけだった。
放っておけない、くらいの感覚で。
呪力じゃない力を持ってるけど、普通でおとなしい子。
でも、彼女が笑うたび、怯えるたび、踏み込ませない顔をするたび。
気づいたら、ずっと欲していた。
彼女の“心”を。
僕に向けてくれる、たったひとつの居場所を。