第20章 「君の心をさらったその日から**」
「……あの子ね、両親が死んだのは、自分のせいだって。ずっとそう思ってるのよ」
「事故や災害で生き残った人が感じてしまう罪悪感ってやつだね」
僕がそう言うと、おばあちゃんは頷いた。
グラスに注いだばかりのお酒が、かすかに揺れる。
「“仕方がなかった”とか、“運が悪かった”とか」
「でも、本人にとっては、そんなふうに割り切れる話じゃないんだと思う」
おばあちゃんは視線を落とし、静かな声で続ける。
「……実はね。、当時のこと……私にもほとんど話さないの。詳しいことは、何も言わなくて」
「もまだ……どうしていいか分かってないのよ。悲しみの抱え方も、手放し方も……」
「わからないまま……ただ、全部自分で受け止めようとしてる」
それは、僕が初めてを見たときの印象とも、重なる気がした。
小さく、繊細で、でもどこか頑なで。
誰にも触れられない場所が、心の奥にあるんだろうなって。
「両親が亡くなってからのを見てるとね――」
「なんていうのかな……生への執着がないっていうか、どこか諦めてるっていうか」
それを聞いて、上層部に処刑を言い渡されたときのを思い出した。
泣いて縋るわけでもない。
怒りをぶつけるわけでもない。
自分の番が来ただけ、と彼女は言った。
生きたいかどうか以前に、
生きる価値そのものが、最初から自分にはないような。
おばあちゃんは、少しだけ目元を緩めて言った。
「だから、あの子が“新しい学校に進みたい”って言ったとき、驚いたの」
「でもね、それ以上に……嬉しかった」
当時の気持ちを反芻するように、言葉を確かめながら続ける。