第20章 「君の心をさらったその日から**」
「……あのさ」
言いながら、自分でも何を言いたいのかよく分かってなかった。
「僕はある人に置いてかれてから……ずっとそいつのことを考えてる。でも、それが……あいつが望んでたことなのかって」
「時々……自分がどこに向かってるか、分からなくなる」
……なんで、僕はこんな話してるんだろ。
今日会ったばかりの人に。
おばあちゃんは、少し目を丸くしたあと――
「あははっ! 当たり前じゃない!」
思ってたより、ずっと明るい声が返ってきた。
悩みなんて笑い飛ばすような、あたたかい笑い声。
「そんなの、みんなそうよ。私だって、答えなんか出てないもん」
「生きてる限り、立ち止まるし、振り返るし……寄り道ばっかりよ」
くいっとグラスをあおりながら、笑って言ったその姿はどうしようもなく自然だった。
それがこの人の強さなんだと思った。
悲しみに強がるんじゃなくて、悲しみのとなりで笑えること。
「きれいな答えなんて、そもそもないのよ。ね、先生」
最後にそう言って、おばあちゃんはまたグラスにお酒を注いだ。
ああ、そっか。
この家の空気が妙に落ち着く理由が、ようやくわかった気がした。
悲しみも、寂しさも。
なかったことにしないまま、そこにあるものとして受け入れている。
だからと言って、冷たいわけでも、暗いわけでもない。
ただ優しく寄り添ってくれるような、情けない自分を肯定してくれる――そんな気がした。
(の力と一緒だな……)
そう思いながら、僕はテーブルに置いた水のペットボトルを手に取り、一口飲む。
少し迷ってから、おばあちゃんに視線を向けた。
「……の両親のこと、聞いていい?」
その問いに、おばあちゃんは一瞬だけ目を丸くしたが、にやっと口角を上げた。
「気になる?」
「、家族のこと……あんまり話さないからね」
話したくない、というより。
話せないまま、抱えてる――そんな感じがして。
「まだ……苦しんでるのも、わかる」
おばあちゃんは僕の言葉を黙って聞いていたが、小さく息を吐いた。
「……先生になら、話してもいいかな」
そして、静かに語り始めた。