第20章 「君の心をさらったその日から**」
「遺書だよ」
「……遺書?」
「そう。自分への戒めみたいなもん。 いつ死んでも後悔がないように、って言うでしょ?」
グラスを転がしながら、おばあちゃんはゆっくり言葉を選ぶ。
「だから、こうやって時々書いてるの。思ったこととか、伝えたいこととか」
グラスを転がる氷の音が、小さく響いた。
「それに……残された人が、生きることに集中できるようにね」
おばあちゃんはくいっとグラスを持ち上げて、照れ隠しみたいに笑った。
「……なんてね。 ちょっといいこと言っちゃったわ」
「それに……家族も、もう私とだけだから」
「こうして残しておけば……私が死んでも、が考え続けなくて済むでしょ」
そう言って、ノートを閉じて、グラスに入ったお酒を飲み干した。
生きてる人が、生きることに集中できるように……か。
呪術師である以上、仲間の死はつきもので。
僕たちは死んだ仲間の意志や夢を継いで、生きていく。
……でも、それはある意味、呪いでもある。
僕が死ぬなんて、ありえないんだけど……
もし僕に何かあったら、悠仁たちには五条悟という存在を忘れて、それぞれの強さで生きていってくれたらとも思う。
あー、でもには……
そんなふうに割り切れないかも。
僕はもう少しおばあちゃんと話がしたくて、向かいに腰を下ろした。
「でも……そう簡単には割り切れないのが人間でしょ」
「はは、そうだね。そこが人間の可愛いところでもあるね」
おばあちゃんは、空になったグラスを見つめながら言った。
「先生は、悲しみを癒す方法って知ってる?」
「悲しみを癒す? そんなのあるの?」
僕が問い返すと、おばあちゃんは頷いた。