第20章 「君の心をさらったその日から**」
ゆっくりと身を起こし、の腕を掴んで自分の胸元へ抱き寄せた。
「えっ、せ、せんせ……っ!?」
いつもが使ってるシャンプーの匂いが、ふわっと香った。
の体温が心地よくて気持ちいい。
あの花と同じ温度。
(……ああ、これ)
(これが、欲しかった)
彼女の指が、そっと僕の制服を握った。
その小さな反応に、拒まれていないことがわかって嬉しくなる。
だから、抱きしめる腕に少しだけ力をこめた。
「まだ……酔ってますか?」
が心配そうに首を傾げて、こっちを見てる。
まだ酔ってるとか言ったら、僕のわがまま聞いてくれそう。
笑いそうになるのを堪えて、僕は耳元でそっと囁いた。
「が可愛すぎて、抱きしめたくなっちゃった」
「――っ」
は顔を隠すように、僕の胸元に顔を埋めた。
ほんと、耐性ないんだから。
たぶん顔を見たら、真っ赤になってるんだろうな。
リビングの壁にかかっている時計を見ると、もう十時半を回っていた。
テーブルの上は片付いていて、家の中はすでに静まっている。
「おばあちゃんと、伊地知は?」
そう聞くと、が顔を上げた。
「えっと……おばあちゃんは、もう寝室で寝てます。けっこう酔ってたし」
「伊地知さんは……帰りました。明日の朝、また迎えに来るって」
「……ふぅん」
え? てことは、の家にお泊まり?
……伊地知、ナイス判断。
ふと自分の顔を触ると、あるものがないことに気づいた。
「あれ? 目隠し、外した?」
その一言に、が言いにくそうに答えた。
「……おばあちゃんが、先生が寝てる間に……外しちゃってて」
「わ、私、ダメって言ったんですよ!? でも『この顔を隠してるの勿体無い』って聞いてくれなくて……!」
あのおばあちゃんなら、やりそうだな。
僕の六眼、相当気に入ってたし。
はスカートのポケットから、目隠しを申し訳なさそうに差し出してきた。
「す、すみません……っ」
僕はその手から目隠しを受け取った。