第20章 「君の心をさらったその日から**」
ふぅ……お腹いっぱい。
気づけば、寿司桶の中はほとんど空。
端に寄せられた数貫を残して、私はそっと箸を置いた。
ふとおばあちゃんを見ると、グラスを覗き込んでいる。
「あら……もう、お酒ないわね」
そう言って、テーブルの上を見回し、「チューハイがあったはずなんだけど」と、きょろきょろ探し始めた。
「おばあちゃん、もう飲み過ぎだよ」
「え〜? まだ平気よ」
お酒を探しに立ち上がろうとするのを見て、
思わずおばあちゃんの腕に手を伸ばす。
「ほら。今日はここまで」
おばあちゃんは少しだけ口を尖らせて、
「……はいはい」
渋々って感じでうなずいた。
私はおばあちゃんの手からグラスを取り上げ、
「はい。これ飲んで」
代わりにウーロン茶を差し出した。
なのに、おばあちゃんは受け取らずに、私の顔をじっと見つめている。
「どうしたの? もしかして、具合悪い?」
おばあちゃんは首を横に振って、静かに微笑んだ。
「……、よかったね」
たったそれだけ。
でも、いつものおばあちゃんと違っていて。
聞き返したいのに、なぜか言葉が出ない。
(おばあちゃん……?)
私はただ、おばあちゃんの目を見返すことしかできなかった。
そのとき――
「五条さん!! それ、飲んじゃだめです!!」
伊地知さんの慌てるた声と同時に、先生が見慣れない缶を口に運んでいた。
ごくりと音を立てて、先生がそれを一口飲み込むと――