第20章 「君の心をさらったその日から**」
「そ、そんなの……先生と付き合ってるなんて言ったら、おばあちゃん、どうなっちゃうか……」
「喜ぶに決まってるでしょ?」
「そうかもしれませんがっ……いや、でも絶対大騒ぎするから!」
「え〜、家族に彼氏としてご挨拶できるいい機会なわけだし~?」
「でも、い、今はダメ……!」
焦る私と、面白がる先生の攻防。
完全にこそこそと、二人だけの小声劇場になっていた。
「……なーに? 二人、ずいぶん仲良さそうね」
おばあちゃんが、首をかしげてこちらを見ていた。
にっこり笑いながらも、目は鋭い。
(ま、まずい……!? 気づかれてないよね……?)
私が固まっていると――
「ご、ご五条さんは、ですねっ……! 性格が子供みたいなので、生徒との距離が近いんですよっ!」
伊地知さんも、焦ったようにフォローを入れる。
「伊地知、それどういう意味?」
先生が不満げに眉をひそめる。
「いや、本当のことですし……」
「そうそう! 先生っていうより、なんか、友達って感じなんですよね!」
私も勢いで同意してしまった。
もう、話題を逸らすことしか考えられない。
「まで!? いやいやいや、友達じゃなくて、こい――んぐっ」
私はまた、お寿司を突っ込んだ。
この人、恋人って言おうとしたよね!?
「は、はいっ! どうぞ先生、もう一貫っ!」
「んふ……もぐもぐ……」
先生は無言でもぐもぐしてるけど、目だけはめっちゃ訴えてくる。
私も必死に目で訴え返した。
お願いだから、今は黙っててくださいと。
「ふふっ……あはははっ!」
おばあちゃんが、肩を揺らして笑い出していた。
「なによあんたたち、見てて飽きないわねぇ~!」
その笑い声につられて、私も、伊地知さんも、思わず笑ってしまう。
先生はどこか不服そうに頬をふくらませながら、お寿司をもぐもぐしていた。
そのあとは、おばあちゃんの昔話や、伊地知さんおすすめのうどん屋の話で盛り上がった。
「へぇ〜、今度行ってみようかしら」
「ぜひ。天ぷらもおすすめです」
そんな取りとめのない会話が、ゆるゆると続いていった。
笑って、飲んで、食べて――
久しぶりにこんな風に家で誰かと囲む夕食だった。