第20章 「君の心をさらったその日から**」
おばあちゃんはグラスの縁を指先でなぞりながら、私たちの顔を順に見渡す。
「……そうよね。も、もう十六だしね」
「それに、二人を見てると分かるわ。……いい学校なんだなって」
そして、視線を先生と伊地知さんに向けて、姿勢を正した。
「五条先生。伊地知さん。よろしくお願いしますね、のこと」
言い終えてから、おばあちゃんは少し照れたように笑って、またビールを注いだ。
(おばあちゃん……心配かけて、ごめんね)
すると、おばあちゃんが注いだビールを飲みながら言った。
「あ、でも。あと心配って言ったら……」
「の彼氏のことよ~!」
「――は!?」
思わず手元のお寿司を落としかけた。
箸でギリギリ受け止める。
伊地知さんはむせるみたいに咳き込んでいる。
「ちょっ……おばあちゃん、なに言ってるの……!」
「クラスの男の子が怪しいと思うのよね〜」
「先生は知ってるんでしょ? の彼氏」
先生はお寿司をを口に運びながら、片手を挙げた。
「の彼氏? あー、それ、ぼ――」
「せんせぇっ!!!」
私は箸に挟んでいたお寿司を先生の口に突っ込んだ。
「ど、どうぞ! たくさん食べてくださいね! ほらっ!」
「もぐっ……!」
「お寿司、美味しいですか? ここのお店、近所で評判なんですよ。伊地知さんも、どうぞどうぞ」
伊地知さんも状況を察したのか、すぐに乗ってくれた。
「ええ、ほんとに。どれもネタが新鮮で……!」
「そうなのよ〜! 実は、大将は私の同級生でね〜」
おばあちゃんはすっかり話が切り替わった様子で、伊地知さんに昔話を始めている。
……よかった。
なんとか、話題は逸れた……はず。
私はその隙に、そっと先生の耳元へ顔を寄せた。
「言っちゃダメですってば……!」
すると、先生は寿司をごくんと飲み込んで、
「えー、なんでよ?」
口をとがらせて、子供みたいに拗ねた。