第20章 「君の心をさらったその日から**」
「真面目すぎるから、もう少し僕を見習ってサボることも覚えてほしいくらい」
「先生、面白いこと言うのねぇ!」
いや、面白くないし。
生徒が先生を見習ってサボったらダメだと思うけど。
ちらっと伊地知さんを見ると……同じ顔してた。
ですよね。
でも、二人のそんな言葉のひとつひとつが、
どこかくすぐったくて……あったかくて。
ちょっと、嬉しかった。
そのとき、おばあちゃんがグラスを静かに置いた。
「この子、優しくていい子で、勉強もできるんだけど……」
少し間を置いて、私のほうを見て続けた。
「ちょっと頑張り過ぎちゃうっていうか……無理しちゃうのよね」
「一人で塞ぎ込んで、潰れちゃうんじゃないかって……心配してたの」
そう言って、残っていたビールを飲み干す。
その横顔は、さっきまでの明るさが少しだけ影を潜めていた。
私はお寿司を取ろうとしていた手を止めて、その顔から目を離せなくなっていた。
あのときのおばあちゃんの顔が思い浮かぶ。
呪術高専に進むって言ったとき。
驚いて、それから笑って。
でも、その目がほんの少し揺れていたこと。
それでも、おばあちゃんは……
『が選んだ道なら、おばあちゃんは応援するよ』
そう言ってくれた。
でも、本当はどう思ってたんだろう。
普通の高校に行ってほしかったのかな。
危ないことなんてしないで、平凡に過ごしてほしかった……?
申し訳なくなって、少し視線を落としたそのとき――
肩に温かい感触を感じた。
思わず顔を上げると、先生がそっと私の肩に手を添えていた。
「おばあちゃんの大事な孫は、僕がちゃんと無理しないように見てるし」
「……それに伊地知も、クラスメイトも……この子の周りには、頼りになる奴らがちゃんといるから」
その言葉に、伊地知さんも小さく頷いた。
「だから、心配しなくて大丈夫だよ。それに、はおばあちゃんが思ってるより、ずっと強い子だよ」
先生のほうへ視線を滑らせると、目隠し越しにこっちを見てる気がした。