第20章 「君の心をさらったその日から**」
向かいに座っていた伊地知さんと目が合った。
伊地知さんも同じ顔で、困ったように苦笑いしている。
そして、グラスを手にしながら、そっと頭を下げた。
「私までお寿司をご馳走になってしまって……すみません」
「いえ、そんな! こちらこそ……祖母が引き止めてしまって、すみません」
つられて私も頭を下げると、伊地知さんは首を振った。
「いえ……正直、おばあさまに声をかけていただいて、助かりましたよ。あのまま立ち往生してたら、五条さんの機嫌がどうなることだったか……」
そう言って、天井を仰いだ。
……たしかに。
もし、あのアイスケーキが溶けていたら――
先生の機嫌、たぶん一ヶ月は治らなかったかも。
「あんなふうに誰か連れて帰ってくるの、昔からなんです。おばあちゃん……困ってる人見ると、放っておけなくて」
私がそう言うと、伊地知さんはふっと笑った。
「だからですね。初めてお会いしたとき、なんだか……さんに似てるなって思ったんです」
「えっ、わ、私……ですか?」
似てる? 私が、あのおばあちゃんに?
どっちかというと、おばあちゃんは先生に似てる気がするんだけどな。
「二人でなにコソコソ話してんの?」
先生がお寿司を箸でつまみながら、こちらを覗きこんでいた。
その横から、おばあちゃんまで身を乗り出してきた。
「あ、先生! 伊地知さん! は学校でどんな感じなの? ちゃんとやってます?」
「お、おばあちゃん……!」
慌てて止めようとする私をよそに、ずいずい二人に迫っている。
「いいじゃないの。孫の学校での様子、やっぱり気になるものよ〜」
伊地知さんがやや戸惑いながらも、すぐに穏やかな笑みを浮かべて応じてくれた。
「そうですね……さんは、よく周りのことを見ていて、いつも気づくのが早いんですよ」
「私たち、職員も本当に助かっていて」
「誰かが困ってるとき、真っ先に動いてるのはだいたいさんです」
「うんうん、は本当に頑張ってるよ」
先生もいつもの調子で乗ってくる。