第20章 「君の心をさらったその日から**」
おばあちゃんが、グラスに入ったビールを一気に飲み干した。
「っく〜〜〜〜!! 染みる〜〜〜っ!」
その豪快な飲みっぷりに、伊地知さんが目を丸くする。
「す、すごい飲みっぷりですね……」
先生は手を叩きながら、おばあちゃんに次を勧めている。
「おばあちゃんのもっといいとこ見てみたい!」
ウーロン茶なのに、なんだか酔ってるみたいなノリだ。
「え、ちょ、先生……!」
「はい、おばあちゃん! 飲んで飲んで、飲んで~!」
私が止める間もなく、先生は軽く身を揺らしてコールしてる。
「の先生に言われちゃったら、断れないわよ〜」
「ちょっと、飲みすぎないでよ〜? 頭ぶつけたばっかなんだから……」
おばあちゃんは笑い飛ばすように手を振った。
「心配性だね、は! ……それより!」
お寿司をつまもうとしていた先生のほうへ、ぐいっと身を乗り出す。
「いやぁ、こんなイケメンの先生に教わってるなんてねぇ……。その目隠し、外してみてよ~!」
「もー、その辺にしてよ。 先生、困ってるでしょ」
おばあちゃん、お酒入るといつも強引なんだから……。
初対面の人でも距離なんて関係ないみたいにぐいぐい行く。
先生は箸を置いて、おおげさにため息をついた。
「えー、しょうがないなぁ~。のおばあちゃんだから、特別だよ、特別」
そう言って、目隠しの端に指をかけ、ゆっくりと外した。
そこには、あの透き通るような青い瞳。
光を飲み込むような、どこまでも澄んだ視線。
見慣れているはずのその瞳に、私も思わず見惚れてしまった。
「きゃ~~~~っっ!! なにそれ、めちゃくちゃ綺麗じゃないの~~!!」
おばあちゃんが、仰ぐ手をバタバタさせて大騒ぎしてる。
その隣で、先生は得意げにウィンクひとつ。
「でしょ? よく“国宝級”って言われるんだよね」
「わかるわかる、国宝! いや、もう世界遺産だよ! 睫毛も白いんだね、もう、ひゃ~……っ」
(……この二人、会わせちゃいけなかったかも)
大盛り上がりしているふたりをよそ目に、私は深くため息を一つ吐いた。