第20章 「君の心をさらったその日から**」
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「さ、さ! 五条先生も伊地知さんも遠慮しないでね!」
おばあちゃんは小皿と割り箸を配りながら、ちゃっかり先生の隣に座り込んだ。
その動きの素早さに、思わず口が開きかけた。
テーブルの上には、近所のお寿司屋さんから出前した特上寿司。
桶いっぱいに、トロに鯛にサーモンに、うにイクラ。
もう宝石箱みたいに、艶めいたネタがぎっしり。
「いや〜、でもすごい偶然! まさか、お兄さんがの担任の先生だったなんて!」
「ほんとほんと! こんなとこで、のおばあちゃんに会えるなんてね!」
先生が笑って返すと、おばあちゃんも手を叩いて大笑い。
……もう、すっかり意気投合してる。
おばあちゃん、人懐っこいのは知ってたけど、にしても早くない?
先生はあぐらをかいてすっかりくつろいでるし。
伊地知さんは恐縮したように正座で座ってて……なんだか申し訳なくなる。
で、どうしてこんなことになったかっていうと。
数時間前。
おばあちゃんが連れてきた“若い男二人”の正体は――
まさかの、先生と伊地知さんだった。
「……せ、せんせい!? なんで……!」
「やっ。、久しぶりの実家どう?」
先生が持っていたアイスケーキは、ギリギリ冷凍庫に入れることができた。
そのあとJAFを待つ間に、おばあちゃんと先生が桃をつまみながらスイーツ談義で盛り上がって――
で、車が無事直ったタイミングで、おばあちゃんが放ったひとこと。
「せっかくだから、うちで夕飯でもどうです?」
……それがすべての始まりだった。
思い返してるうちに、宴は次のフェーズに突入してた。
「ほらほら、乾杯するよ〜。も、伊地知さんも。グラス、持って持って〜」
おばあちゃんの勢いに押されて、私も伊地知さんも、おずおずとグラスを取る。
おばあちゃんはビール。
先生と私と伊地知さんは、ウーロン茶で。
「じゃあ――改めて。今日の不思議なご縁に」
「かんぱーい!」
グラスが軽く触れ合って、澄んだ音が鳴った。