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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第5章 「境界に口づけて」


***


が飛び出して、しばらくのあいだ五条はその場に立ち尽くしていた。


(……なんだったんだ、今の)


さっきのの顔が脳裏に焼きついて離れない。
真っ赤に火照って、泣き出しそうで、でも何かを決意したような――そんな顔。


(……僕に、キスしようとしたよな)


喉の奥で小さく息を吐く。


思い出せば思い出すほど、胸の奥にざらつきが広がる。
あの距離、あの熱。
耳に残る彼女の呼吸。


(ただの冗談や突発じゃない。……あの目は、本気だった)


その確信が、自分を揺らしてくる。


(……何を考えてんだ、僕は)


自分を叱るように額を押さえる。
でも、あの瞬間に彼女の瞳に宿っていた感情は、もう見なかったことにはできなかった。


五条は小さく息を吐き、後頭部をぽりぽりとかいた。



「……探しにいくか」



口調は軽くても、心の奥にはまだ妙な引っかかりが残っている。


(会って何を言うつもりなんだ、僕は)


思わず苦笑しながらも、足は自然と前に進んでいた。
五条は訓練場を出て校舎の方へ向かった。


五条が校舎に足を踏み入れた瞬間――


(……ん?)


空気がわずかに揺らいだ。


呪力じゃない。
でも、異質だ。


(……なんだ、この感じ)


空間が波打つような違和感が、六眼に映る。
まるで校舎の一角だけが“別のもの”に塗り替えられたみたいだった。


胸がざわつく。
その中心に――の気配がある。


(……!?)


五条は歩を速める。
迷うことなく、その異質な揺れの源へ向かった。


辿り着いたのは女子トイレ前。


扉の前で立ち止まり、眉をひそめる。
内側から何かが滲み出てくるような、嫌な圧。


「……、そこにいるの?」


軽く呼びかける。
返事はない。


五条はためらわず扉を押し開けた。



「ヒト――」



言いかけた瞬間、空気が変わった。
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