第18章 「血と花の話をしましょう**」
本編の途中なのですが、ここで番外編を挟ませてください。
がひとりホテルの部屋にこもってたあの夜――
実は五条先生と七海さん、こっそりバーで語り合ってました。
大人の会話と、あの“ドアの前”までの裏側、ぜんぶまるっと見せちゃう番外編です。
この番外編を読んだあとに本編を読み返すと、また違った視点で楽しめる……はずです。
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🌙 番外編①:ブルームーンを、ひとつ
ホテル近くのバーは、天井がやや低く、どこか隠れ家めいた空気を纏っていた。
派手さはないが、ほどよい灯りと距離感が心地いい。
カウンターに並ぶボトルたちが、氷の音にじっと耳を澄ましているようだった。
任務はまだ正式には終わっていない。
明日も現地での調査は続く。
だが、こうして一日の区切りにグラスを傾けるのは、七海にとって出張中の数少ない楽しみでもあった。
節度と理性――それさえ守れば、酒は彼にとって仕事に差し障るものではない。
「……スマホ、壊れてんのかな」
唐突な声が、静けさを破った。
隣でグラスを手にしていた五条が、チェリーをくるくるとかき混ぜている。
中身はシャーリーテンプル。
可愛らしいノンアルコールのカクテルが、意外にも彼の手に馴染んでいた。
七海はグラスを置き、微かに眉を動かした。
「それは……私に話しかけているのでしょうか?」
「お前以外に誰がいるんだよ」
ため息混じりに視線を逸らした七海は、それでもきちんと応じる。
それが七海建人という男だ。