第18章 「血と花の話をしましょう**」
「じゃあ、“朝までされたいです”?」
「そ、そそっ……それもっ……っ、ち、違……っ!」
「“朝まではイヤだけど、ぎゅーっと抱きしめられながら、めちゃくちゃにされたいです”?」
「~~~っ!!」
(めちゃくちゃだなんて――)
(そこまでは……思ってないもん)
先生の指先がそっと、私の髪に触れた。
「もっと僕のこと、欲しがってよ」
少し掠れた低い声が、耳のすぐそばに落ちる。
それだけで、心臓がどくんと跳ねた。
(……欲しいって、そんな……)
(いいの? そんなの、言ったら……)
(止まらなくなっちゃうかもしれないのに――)
声が出ない。
ただ、息だけがかすかに震えている。
「。僕と、セックスしたい? 言って?」
「……っ」
“セックスしたい?”
その言葉が、頭の中で何度も反響する。
“したい”って……そんなの……
私からなんて、言えない。
恥ずかしい……っ
引かれる?
変だって思われる?
軽い女って、思われたら?
先生に、軽蔑されたら?
(……いや、やだ、そんなの)
目を伏せたまま、唇がかすかに震える。
言いたいのに、声が出ない。
なのに身体の奥だけは、どうしようもなく熱を帯びていく。
(こんなの、自分じゃないみたい)
だけど――
(また、先生に……あのときみたいに触れてほしい)
だって、私……
もう、どうしようもないくらい先生のことが――
「先生と、した……い……です……」
そう言った瞬間、先生の瞳が細められた。
蒼が私の奥の奥まで、じっくりと見透かしてくる。
見られてるだけで、下腹がきゅんと疼いた。
「……僕も」
その言葉とともに、肩に手が触れ、
ゆっくりと押し倒された。
背中がシーツに沈む。
覆い被さる気配。
近づく温度。
お互いの呼吸の音が混ざり合う。
唇が触れる、その一瞬前――
視界いっぱいに満ちる先生の蒼が、私をさらっていった。