第18章 「血と花の話をしましょう**」
(……な、なんで……バレてるっ!?)
さっきのことが、ぐるぐる蘇る。
下着の中に指を這わせて……
気持ちよくなって……先生のこと考えながら、最後まで――
(せ、先生……なんで分かったの!?)
(六眼って、そういうのまで見えるの!? いや、まさか――)
(……さっき匂い嗅いで分かったとか!? 自分じゃわかんないけど)
(ど、どうしよう……! なんて答えれば……)
「え、と……あの……え、あ……」
言い訳を探そうとしても、口の中で全部絡まってしまって。
情けないくらい、言葉にならない。
「“え”と“あの”しか出てこないけど?」
「っ、う、うるさいです……っ」
やっと声を絞り出したものの、自分でも驚くほど弱々しくて。
先生は、さらに楽しそうに笑った。
「まぁ、その話は――あとで、じっくり聞くとして」
そう言った瞬間、身体がふわりと持ち上がる。
「きゃっ……!」
体勢がくるりと変わり、先生の太ももの上に座らされる。
向かい合わせの体勢に、思わず息を呑んだ。
(えっ、え、えっ……!?)
視線を上げれば、すぐそこに先生の顔。
目を逸らそうとしたのに、顎をそっと指先で掬われてしまう。
蒼い目が、まっすぐに私を覗き込んでる。
「僕がいない間、寂しかった?」
「――っ」
(そんなの……)
先生が出張に行ってから――
ほんとは、ずっと寂しかった。
スマホの通知が鳴るたびに、先生じゃないかって期待して。
通話履歴も、気づけば何度も見返してて。
でも……
(お仕事中だったら迷惑かな)
(うざいって思われたらどうしよう)
そんなことばかり考えて、結局、自分からは一度も電話をかけられなかった。
指は、何度も先生の名前をなぞっていたくせに。
メッセージだけじゃ足りなくて。
画面越しじゃ、この寂しさは埋まらなくて。
(……言えない。そんなこと言ったら……重いって思われる)
もやもやしてるこの気持ちを、どうしたらいいか分からなくて。
「……だって、先生お仕事だったし……だから、別に、寂しくなんて……」
本当のことなんて、怖くて言えなかった。
だから、つい――嘘をついた。
目を逸らしかけた瞬間、先生の視線がまっすぐぶつかってくる。