第18章 「血と花の話をしましょう**」
先生の手が優しく私の頬に触れた。
「好きなものとか嫌いなもの――教えてよ」
「のこと、もっと知りたい」
(……わたし、のこと……?)
一気に顔が熱くなって、思わず体を前に戻す。
このままじゃ、ばれる。
このドキドキも、にやけそうな顔も――全部。
(先生が、わたしのこと知りたいって……)
ただ、それだけのことなのに。
唇の端が勝手にゆるむのを、どうしても止められなかった。
(……にやけるの、止まって……お願い……)
すると、後ろで髪をそっとかき分ける気配がした。
耳のすぐ後ろ――首筋のいちばん敏感なところ。
そこに、吐息が落ちてくる。
「僕は、の匂いが好き」
「――っ!? せ、先生っ……!」
思わず息が止まりそうになった。
(い、今……匂い、嗅がれた……!?)
動揺して、思わず立ちあがろうとしたその瞬間――
背中から回された腕に、ぎゅっと抱きとめられる。
「だーめ。吸いが今日のご褒美って決めてたから~」
「っ、な、なにそれ……意味わかんないです……!」
先生は鼻先をまた首筋に近づけた。
くすぐったくて、変な声が出そうで。
でも、抱きしめられていて、逃げられない。
「んー……やっぱの匂い、落ち着く。癒される……」
先生の腕がさらに私の腰を引き寄せる。
先生との距離はもうゼロに近い。
恥ずかしすぎて言い返すこともできず、
ただ先生が嗅ぎ終わるのを……耐えるしかなかった。
「ねぇ、」
「な、なんですか……」
顔を逸らしたまま答えると、先生は今度は耳元で囁いた。
「本当は、さっき何してたの?」
「……え?」
何のことか分からず聞き返すと、先生はくくっと喉を鳴らして笑った。
「シャワー浴びてただけじゃないでしょ?」
背後から私を覗き込むようにして、にやりと笑う。