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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第18章 「血と花の話をしましょう**」


***


ホテルの部屋は、空調の唸りだけが響いていた。
カーテンの隙間から、ビルの明かりが少しだけ漏れている。


三人でご当地グルメを食べたあと、ホテルに戻り、すぐシャワーを浴びた。

 
持ってきた部屋着のTシャツとショートパンツに着替えたものの、今日はどうしても髪を乾かす気になれなかった。
濡れた髪でシーツを汚さないよう、枕元にタオルを敷いて、ベッドに体を沈める。
シーツの感触が、まだ火照った肌に心地いい。


目を閉じても、まぶたの裏に浮かぶのは――あの遺体。
人の形をしているのに、もう人じゃないみたいで。
でも、不思議と綺麗だとも思った。
……いや。
だからこそ、怖かったのかもしれない。


胸の奥がざわついて、シーツを指先でぎゅっと握る。
それでも消えてくれない像を振り払うように、もう一度、強く目を瞑った。



「……先生……」

 

誰にも届かないくらいの小さな声で、名前を呼ぶ。


先生と七海さんは「大人の話がある」と言って、二人でどこかへ出かけていった。
フロントでおすすめのバーを聞いていたから……
飲みに行ったのかもしれない。


きっと、二人でしか話せないことがあるんだろう。
七海さんと先生は、学生時代の先輩後輩だって言ってたし。


でも――


ほんのちょっとだけ、二人で過ごせるかもしれないって。
勝手に期待してた。

 
(……遊びで来たわけじゃ、ないもんね)

 
あの日。
先生のマンションで二人きりで過ごした夜から……ずっと。
まともに顔を合わせていなかった。


先生、海外出張入っちゃって。
連絡は取ってたけど、こうして会うのは……ほんと、久しぶりだった。

 
久しぶりに聞いた、先生の低くて柔らかい声。
名前を呼ばれるたびに、胸が痛くなるほど高鳴った。

 
指が頬を撫でたときの感触。
そこから伝わってくる熱が肌に残って離れない。

 
(だめ……だって、私)

 
あの夜のことを、思い出してしまう。
ベッドに沈んだ熱、重なった体温、耳元で囁かれた声――
全部が、昨日のことみたいに蘇ってくる。
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