第18章 「血と花の話をしましょう**」
“送る”という行為の、その先にあるもの。
あの“花”が、意味するものは――
京都で五条家に残されていた、悠蓮の記録。
都合よく、まるで何かを隠すように破り取られていたページ。
そこに書かれていたのが、今回の“白い花”のことだったとしたら。
(それが、悠蓮が“魔女”と呼ばれた理由だったら……)
制服のスカートの端を、知らず知らずのうちに握りしめていた。
手のひらにじんわりと汗が滲む。
私は本当に、受け止められるのかな。
どんなことだって覚悟してきたつもりだったのに。
そのとき私は、自分の力を……自分自身を、許せるのかな。
視線を戻すと、先生はまだ七海さんに話しかけている。
楽しげに、何かを笑っているその横顔。
あの日から、胸の奥でずっと沈んでいる悠蓮の言葉が心を揺らす。
『五条の名を背負う者に、心を許すな』
(先生のことを言ってるわけじゃないかもしれない。それでも――)
その言葉が、どうしてこんなに引っかかるの?
私は悠蓮じゃない。
悠蓮と五条家に何があったかわからないけど……
私は先生を信じてる。
いつだって、私の味方でいてくれる人だから。
悠蓮の言葉を、全部信じる必要なんてないはずなのに。
……そう思いたいのに。
少しでも不安になってる自分がいることが、いちばんいやだ。
私は、先生のことがこんなにも好きなのに――
目を伏せ、そっと額を窓に預けた。
ひんやりとしたガラスが、熱を持った肌を静かに冷ましていく。