第17章 「花は蒼に濡れる**」

バスルームの扉を閉めた瞬間、背中がずるずると脱力して壁にもたれかかった。

　
（ 先生、呆れてたよね……）

　
さっきの声を思い出す。
困ったような、でもちょっと苦笑してて。


（……だって、汗くさいの嫌だったんだもん）


自分の顔を両手で覆ってうずくまる。
　

（こういう時……気にしないのが普通なの？）

（……大人の女の人なら、もっと上手いやり方があるのかな）

（ていうか、みんな、どうしてるのー！？）

　
心の中で叫びながら、一人頭を抱えた。
でも、心臓の鼓動はさっきよりずっと早くて、うるさくて。
頬はまだ、触れただけで熱いのがわかる。


しばらくその場でしゃがみこんでいた。
けれど、時間は待ってくれない。
バスルームの中に静けさだけが積もっていく。

　
（……はやく、シャワー浴びなきゃ）

（ 先生……ほんとに乗り込んできそうだし……）

　
ぺちんと頬を軽く叩いて、
　

（よし……、女は覚悟だ）

　
そう思い、ゆっくりと立ち上がった。
急いで制服のボタンに手をかけるが、指先がわずかに震える。

　
シャツのボタンに手をかけると、指が少し震えた。
スカートを脱ぎ、下着も外すと、鏡の前にぽつんと立つ自分がいた。


胸元まで下ろした髪の毛は、昼間の暑さと汗で少し乱れている。
視線を下に落とす。
胸、ウエスト、脚――


指先で髪を整えながら、そっと深呼吸をした。


（……この体、これから先生に……見られるんだ）

　
肌のあちこちに、恥ずかしさが走る。
まだ、大人みたいな曲線もない。
胸も控えめで、腰も細いだけ。
どこか幼い印象が残っていて――