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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第4章 「触れてはいけない花」


掴んでいた五条の服――その布を、もっと強く握ろうとしていた。
近づきたかった。
この温もりに、もう少しだけ触れていたかった。


――そのとき。


『……その熱が育つほど――おまえは私とひとつになる。』


頭の奥に、あの女の声が響いた。
突然、氷を流し込まれたように全身が冷える。


(……いや……もうやめてよ!)

「っ!」



反射的に、五条の胸を押しはらった。



「?」



不意の拒絶に、五条が小さく眉をひそめる。
けれどは答えられない。
胸が痛い。呼吸が乱れる。


――怖いのは五条じゃない。
でも、近づくほど、あの声が絡みついてくる。



「……っ、ごめんなさい……!」



呟きだけ残して距離を取ったを、五条はしばらく黙って見つめていた。
普段の飄々とした気配が消え、ただ真剣な目だけが向けられる。



「……」



呼ばれて、肩がびくりと震えた。



「何があった?」



低く落とされた声。
責めでも咎めでもない。ただ、誤魔化しを許さない響き。


は唇を開きかけたが、喉が塞がったように声が出なかった。

――あの女の声が、まだ耳の奥で囁いている。

『あの男も、おまえの中の熱も、すべて呑み込め。それがおまえの“目覚め”だ』

(……やめて……やめて……!)


思考が引きずられる。
近づきたい。もっと触れていたい。
でも、それが許されないことのような気がして、恐怖が背骨を駆け上がる。



「……っ……な、なんでも……ないです……」



絞り出すような声で答え、目を逸らす。
五条はしばらく黙っていたが――ふっと息を吐いた。



「……なんでもなくないよね」



低く落ちた声が、庫の中に響く。


の心臓が跳ねた。



「この前見た夢と……関係あるんじゃないの?」



歩み寄る足音。
逃げ場を塞ぐように、五条が距離を詰めてくる。



「っ……!」



反射的に後ずさるが、背中が棚にぶつかり、動けない。


五条はそのままの手首をそっと取った。
力は込められていないのに、振り払えない。



「じゃあ――なんで、あの夜、僕の部屋の前にいたの?」
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