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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第4章 「触れてはいけない花」


感じたのは、温かさだった。


恐る恐る目を開けると――すぐ目の前に、五条の胸元。
彼の腕が自分をしっかりと抱きしめ、崩れ落ちてきた呪具を片腕で受け止めていた。



「危な。、怪我は?」



耳元で響く声は、いつもの軽口なのに、どこか低くて落ち着いていた。


(……せ、先生……?)


自分を覆う広い腕の温もりに、胸が締めつけられる。
さっきまで恐怖で震えていたのに――今は全然違う理由で震えていた。


(……な、なにこれ、どうしよう……!)


胸の鼓動が煩くて、五条の顔を見られない。



「す、すみませんっ!もう大丈夫ですので!」



は慌てて体を離そうとした。


その瞬間――



「っ!」



足元で何かを踏みつける感触。
崩れ落ちていた刀の柄だった。


バランスを崩し、身体が後ろに傾く。


(――倒れる!)


咄嗟に手を伸ばす。
掴んだのは五条の服の裾。


しかし、そのまま二人の体重が重なり――


ドサッ。


冷たい床の衝撃。
同時に、広い腕がを包み込む。



「おっと」



五条の片腕が床を支え、の体を押し倒す形になっていた。
顔と顔の距離は――息が触れ合うほど近い。


(……近い、近すぎる……っ)


耳の奥で、自分の鼓動だけが暴れている。
その速さが、五条に伝わってしまうんじゃないかと錯覚する。


五条の顔がすぐそこにあった。
目隠しの奥でどんな表情をしているのか、見えない。


――だから余計に怖い。
何を考えているのか、どこを見ているのか、わからない。


息を呑む音が、自分のものか五条のものか区別できなかった。


時間が伸びる。
秒が、永遠みたいに長い。


(……動けない)


逃げなきゃと思うのに、視線を外せない。
胸の奥が焼けるようで――それが恐怖なのか、別のものなのかすらわからなかった。



「……」



低く名前が落ちる。
耳に触れる距離で、それだけで体が跳ねた。


五条がわずかに息を吐いた。
その仕草の意味は――読めなかった。



「……せん、せい……」



の唇から、無意識に声が漏れた。
自分でも驚くほど、かすれた声だった。
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