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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第16章 「心のままに、花が咲くとき」


「これは怪しいわね、伏黒?」

「……俺に振るな。困ってるだろ」



伏黒くんは呆れたように小さく息を吐いた。

 

「そっか、は五条先生がタイプなのか〜」



虎杖くんがニコッと笑って、カップを片手にからかうような声を上げる。

 
(ま、まずい……!)

 
思わず伏せた視線の奥で、冷や汗がにじむ。
 

(ちがう……ちがうって言わなきゃ、まずい……!)

 
硝子さんと伊地知さんには、キスしてるところを見られてもうバレている。
さらに、野薔薇ちゃんたちにまで知られたら――

 
(……絶対、まともに学校生活なんて送れない)

(みんなに隠し事するの、ほんとは嫌だけど……でも、でも……!)

(“実は先生と付き合ってます”なんて言えるわけない……!)


 
「な、ないよ! ち、違うから……っ!」

 

思わず声が裏返る。
自分でも引くほど、必死な声。

 

「そ、尊敬してるけど……タイプとか、そういうのじゃ……ないし!」


 
そう言い切った直後。













「……ん? 何が“ない”の?」

 

突如、病室に放たれたその声に、
全員の動きがぴたりと止まる。

 
その場にいた全員が、一斉にそちらを向く。



「ー、迎えに来たよー」



病室の入り口には、他でもない――
いつもの制服姿にサングラスの先生だった。

 

「お、一年全員集合してるじゃん」



先生はそう言ってひょいっと紙袋を私に渡す。

 

「はい、お見舞い。今日はドーナツだよ」



サングラス越しでも伝わる、いつもの余裕たっぷりな笑顔。

 
野薔薇ちゃんがすかさず袋をのぞき込んで、目を見開いた。

 

「えっ、ちょっと待って。これって、今渋谷で大行列の――!」

「“生ドーナツ”じゃん! 午前中には売り切れるってやつ!」

 

虎杖くんも思わず声を上げる。
それを聞いて、私も袋をのぞくと、色とりどりのドーナツがきれいに詰められていた。

 

「五条先生、まさか……朝から並んだんですか?」

 

伏黒くんが信じられないと言わんばかりの顔で問うと、

 

「僕が並ぶなんて、地球がひっくり返るよ」

 

そう言って、先生はにやっと笑った。
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