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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第16章 「心のままに、花が咲くとき」



「……先生と、ふたりになれるところ……行きたい、です」

 





言った瞬間、先生の動きがぴたりと止まった。


(……あっ……)

 
心臓がびっくりするくらい速くなる。
息もうまく吸えない。


(……どうしよう、言っちゃった……!)

(えっ、先生、引いてない……?)


怖い。けど――それ以上に。


もっと、触れてほしい。
もっと、近くでちゃんと感じたい。
あの京都での夜の、優しいだけじゃない――
迷いも遠慮も捨てて、ただ貪るように私を求める、あの熱。
すべてを欲しがる、あのときの瞳。


……あれを、もう一度。


身体の奥が、先生を覚えてる。


胸の奥でずっと抱えてきた気持ち。
恥ずかしくて、怖くて、言えなかったけど……
ずっと、願ってたことだった。

 
時間が、止まったような気がした。




けど、その静寂を破ったのは先生の指先だった。
私の手にそっと触れ、指がなぞるように絡め取られていく。


触れ合った部分からじんわりと熱が広がり、顔まで一気に赤く染まっていくのがわかった。


嬉しいのに、怖い。
期待と、恥ずかしさと、安堵と、ぐちゃぐちゃに混ざり合う。
もう、自分の気持ちが何なのかさえ、わからなかった。


ただ、先生のその動きだけが確かな現実だった。


視線をあげると、先生と目が合った。
その蒼い瞳には、あの夜と同じ――







熱と欲が滲んでいた。


 




蝉の声が、どこか遠くで鳴いている。
でも、その音さえ届かなくなるくらい。
この瞬間だけが、永遠みたいに閉じ込められた。


指と指は、ほどけることなく重なったまま。







――ふたりだけの夏の花が、そこにあった。
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