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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第16章 「心のままに、花が咲くとき」


***


男が連行され、パトカーの扉が音を立てて閉まる。
遠ざかっていく赤色灯を、私は無言で見つめていた。

 
隣で先生もパトカーが遠ざかるのを見ながら、

 

「……記憶を見たからって、がここまでする必要なかったんじゃない?」

「そもそもこれ、呪術師の仕事超えてるし?」

「……わかってます」



苦笑いを浮かべながら、私はそう答えた。



「あの人が逮捕されたからって、亡くなった人たちがが帰ってくるわけじゃないってことも……」 



先生は黙ったまま、私の横顔を見ていた。

 

「でも……」

 

私はそっと、ポケットからキーホルダーを取り出す。
ガラス玉が夏陽に透けて光っている。

 

「最後にこれを私に渡したのは……理由があったんじゃないかって……」



指先で、そっと貝殻の表面をなぞる。
ひんやりとした感触の奥に、かすかに――あの子の気配を探すように。



「……少なくとも、あの子が残した“悔しさ”は、ちゃんと送れたと思うんです」



私は貝殻を胸元に押し当て、静かに目を伏せた。
まぶたの裏に浮かぶのは、あの子の笑顔。


『……お姉ちゃん、バイバイ!』


そう言って、嬉しそうに両親の元へ駆けていった姿――


(……終わったよ、ユウナちゃん)


小さく、心の中でそう呟く。

 
この貝殻はきっと、あなたが私に託してくれた願い。
だから私は、ここに来たんだ。

 
私はそっと目を上げ、隣に立つ彼を見た。 



「……ねえ、先生」

「ん?」

「私……少しは、呪術師らしくなれましたか?」

 

先生は意地悪そうに笑った。

 

「どうだろ。まだ“見習い”かな」

「ええっ……」


 
口を尖らせた私を見て、先生はくくっと喉の奥で笑った。

 

「冗談だって。力のかたちが違っても――が誰かを救ったって事実は変わらない」

「……魔女なんかじゃない」



そう言って、私の額をそっと指でつついた。
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