第16章 「心のままに、花が咲くとき」
「あ、そうだ」
ポケットに手を入れ、何かをごそごそと取り出す。
「の制服のポケットに、これが入ってた」
そう言って差し出されたのは、
あの小さな貝殻のキーホルダーだった。
(……それ……)
私は硝子さんからそれを受け取り、指先でそっと転がす。
キーホルダーに付いた小さなガラス玉が、光を受けて淡くきらめいた。
(……ユウナちゃん……)
指の中で感じるこの感触が、
あの子の声や笑顔、手のぬくもりまでを思い出させた。
「――硝子さん」
「ん?」
「……明日、外出許可をもらえますか?」
硝子さんは、片眉を上げる。
「いいけど……どこ行く気?」
その問いには答えず、私は二人を見つめた。
「私、まだ……やることがあります」
この手の中にあるものは、あの子が残してくれた“願い”だ。
それに、ちゃんと応えたい。
後悔じゃなくて、未来へ繋ぐために――
私は貝殻をそっと握りしめた。
静かな決意とともに。