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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第16章 「心のままに、花が咲くとき」


「それは、ない」

「上が本気で殺すつもりだったなら、瀕死のを助けたりなんてしない」



私は息を呑んだ。



「……え、助けたって……?」



先生は私の目をまっすぐ見て、ゆっくりと頷いた。



「僕がの元に着いたとき、すでに傷には応急処置が施されていた。硝子が言うには、その処置がなかったら……助からなかっただろうって」



頭がぐらりと揺れた気がした。



「傷口は綺麗に止血されていた。処置も的確で、無駄がなかった」



先生はどこか見えない敵を睨むように目を細める。

 

「あの応急処置……医療知識がないと、ああはできない」

 

その言葉を聞いたとき――
ぼんやりとしていた記憶の断片が、そこだけ妙に鮮明によみがえる。

 
(あのとき……)

(意識が遠のく中……誰かが、私の頬を撫でて……)

 

『……大丈夫。僕が助けてあげるから』

 

(……あの声、あれは……)

 

ハッと息を呑む。
全身が冷たいもので満たされたように震えた。
 


「……諏訪烈……」

 

先生の眉がわずかに動く。

 

「……すわれつ?」

 

私はゆっくりと頷いた。

 

「意識を失う直前――あの人が、傍にいた気がしたんです。でも、すぐに気を失っちゃって……」

 

指先がかすかに震える。


 
「……夢じゃなかったんだ、あれ」

 

先生の瞳が鋭くなる。

 

「、その“諏訪烈”ってやつ……知ってるの?」

 

私は少しだけ間を置いて、そっと言葉を継いだ。

 

「以前、京都の五条家の敷地で会ったことがあるんです。
その時、向こうは……私のこと、知っているようでした」

 

その瞬間、先生の瞳が静かに揺れた気がした。



「……うちで?」

 

先生の声が低く響く。

 

「……はい。先生がお家の用事で席を外した日です。
私一人で敷地の中を散歩してて……そのとき、声をかけられました」

 

思い出すたび、胸の奥がざわつく。
あの男の目。
笑み。
私の名前を呼んだ声。

 

「そういえば……あの人、誰かに“会いに来た”って、言ってました」
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