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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第15章 「その悔いは花冠に変わる」


膝が、がくりと崩れた。
そのまま地面に倒れ込む。
濡れたアスファルトの感触が頬に冷たい。

 
息がうまく吸えない。
胸が苦しい。


脇腹へ手を伸ばす。
ぬるりとしたものが、指先に絡んだ。
思った以上に、出血している。


乾いた笑いが、喉の奥からこぼれる。
 

やっと、“花冠の魔導”を自分のものにできたのに。
これからは、少しでもみんなの役に立てるかもしれないって――
そう思えたばかりだったのに。

 
……死んじゃったら、お父さんとお母さんに会えるのかな。
それはそれで、悪くないのかもしれない。

 
でも、死んじゃったら……
もう先生には会えないのか。


ちゃんと、ごめんなさいって言いたかったな。
あんなふうに避けて、嘘ついて、誤魔化して――

ほんとは、ちがうのに。
ほんとは――


先生にぎゅってしてもらうの、いちばん好きだったのに。


あったかくて、どきどきして……でも、安心できたの。
それだけで、強くなれたのに。


そのこと、ちゃんと伝えたかったな。




涙がこぼれて、頬を伝って地面を濡らしていく。


(先生に、会いたい……)


もっと、先生といろんなとこ行きたかったよ。
映画とか、水族館とか。
またスイーツ巡りもしたかったな。


もっと、キスだって……その先だって……
……したかったよ。

 
伏黒くんにも、ちゃんと謝っておきたかった。
野薔薇ちゃんとの買い物の約束も、守れなかったな。
虎杖くんにゲーム教えてもらうの、すごく楽しみにしてたのに……

 
視界がにじむ。
その奥にどこまでも広がる星空が見えた。

 
(……もっと、みんなと……一緒にいたかったな)

 
まぶたが、ゆっくりと降りていく。
光が閉じていく。

 

そのとき――

 

誰かの足音が、近づく気配がした。
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