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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第15章 「その悔いは花冠に変わる」


……ねぇ、先生。


誰かの悲しみを全部わかってあげるなんて、私にはできっこない。
神様でも、聖母マリアでもないから。
ただの、高専に通う女子高生で……ちょっと、変な力があるだけ。


先生みたいに、強くなんてなれない。
みんなを救うなんて、そんな大きなこと……たぶん、私には無理。


でもね。
目の前で泣いてる誰かがいたら、
何も言わずにハンカチで涙を拭いてあげたい。
その頬に触れる手だけでも、温かくあれたらって……そう思う。


雨に濡れていたら、傘をさしてあげたい。
独りぼっちなら、一緒にいてあげたい。
怖いときは「怖いね」って、ちゃんと言ってあげたい。
泣いているなら、無理に止めたりせずにそっと隣で見守ってあげたい。
名前を呼んで、「ここにいるよ」ってまっすぐ伝えてあげたい。


そんな小さなことでも、誰かの心にほんの少しでも届くなら。
それだけでも、ほんの少し心があたたかくなれるなら。


私はそれを信じたい。


それだけじゃ足りないかもしれないけど……
それでも、私は――そういうふうに、誰かのそばにいたいんだ。




……先生が、私の手を握ってくれたみたいに。

 

胸に、そっと手を当てる。
たしかに――“反応”していた。
心臓の鼓動とは別に、奥の奥で震える何か。

 
(……これは……)

 
温かいものが、胸の内からじんわりと広がっていく。


まるで陽だまりのように、優しくて、懐かしくて。
涙のように、静かに流れてくる光。
それは私の指先に集まり、やがて――

 
花が咲いた。
どこからともなく、小さな花弁たちが舞い始める。


光を孕んだ白色の花びらが、ひとひら、またひとひらと集まり、ゆっくりと輪を描くように――

 

少女の頭上に降りていく。
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