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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第15章 「その悔いは花冠に変わる」


夕暮れの訓練場に私は小太刀を握ったまま、そこに立ち尽くしていた。


私には呪力がない。
あるのは、自分でもよくわからない異質な“力”だけ。


(確かに、呪霊も祓うことができるけど……)

(……私も、野薔薇ちゃんたちみたいに術式があればな)


そんなことを考えていると、不意に声が響いた。



「……おーい、そんな顔しないの」


(先生?)


振り返ると、夕陽を背に先生が立っていた。



「何、考えてたの?」



私は少し口ごもってから、正直に答えた。



「……私にも呪力があったらなって……」



すると先生は、ほんの少しだけ考えるような間を置いてから口を開いた。



「まぁ、確かに呪力がないってのは不利だけどさ――
逆に言えば、気配を読まれにくいってことでもある」

「え……?」

「たとえば、他の呪力に紛れてたら、の存在に気づくのは僕でもけっこう難しいよ」


(気づかれにくい……)


そう言われて、私は少しだけ顔を上げた。
先生はふっと笑って、軽く肩をすくめる。



「あ、でも――訂正。はいい匂いするから、近づいたらすぐわかるけどね」

「……え?」



次の瞬間、先生が近づいてきて、私の髪のあたりに顔を寄せ鼻を近づけてきた。



「ちょ、ちょっと! や、やめてくださいっ」

「……の匂い好き。この匂い、覚えちゃったもんね~」

「い、今、汗かいてるからっ、汗臭いですから!!」



 





私は静かに目を開けた。
 

『呪力がないってことは、気配を読まれにくいってことでもある』


先生の言葉が頭の中で繰り返される。
 

(……今、この場に“呪力”が流れているもの……)


私はゆっくりと目を伏せながら、思考を巡らせる。


(呪霊。呪具。そして――この眼鏡)

 
私の体には、呪力はない。
でも、この眼鏡には“視るため”の呪力が流れている。


視界の端で、小太刀が落ちているのが見えた。
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