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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第4章 「触れてはいけない花」


窓の外は、夜の深い藍に沈んでいた。
かすかな街灯の光が、カーテン越しに揺らめいている。


はベッドの上で枕を抱き、頭を埋めた。
息が浅い。胸が苦しい。


今日一日の光景が、何度も何度も頭の中で繰り返される。


――名前を呼ばれた瞬間の鼓動。
――髪に触れられた指先の感覚。
――花びらを差し出したあの距離の近さ。


(……なに、これ……)


息が乱れて、枕を強く握る。
五条の笑顔が、声が、まぶたの裏に焼きついて離れない。



「だめ……考えちゃだめ……」



かすれた声が漏れた。


先生なのに。
あの人は、みんなの先生なのに。


どうして、自分だけがこんなにおかしい。


涙がこぼれる。
理由もわからない涙だった。


――そのとき。


耳の奥で、あの女の声が蘇る。


『……その熱が育つほど――おまえは私とひとつになる』


ははっと顔を上げる。



「……やだ……やめて……」


『あの男も、おまえの中の熱も、すべて呑み込め。それがおまえの“目覚め”だ』


夢の中で聞いたはずの声が、今この部屋で囁いているように響く。
背筋が冷たくなるのに、胸の奥はさらに熱を帯びていく。


耳を塞いでも、声は消えない。


――まるで、この胸の熱を望んでいるかのように。


怖い。
でも、抗えない。


(私、どうなっちゃうの……)


闇に沈む部屋で、は小さく震えていた。
その熱がどこへ向かうのかもわからないまま――。
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