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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第4章 「触れてはいけない花」


(……やめて。こんな近くにいたら、私おかしくなる……)


心の奥で、悲鳴にも似た声が溢れる。



「そ、そうですね。だから、変な夢見たのかな。」



努めて明るく振る舞おうと、は笑顔を作った。


――その瞬間。


五条の手が、の髪に伸びた。



「桜、ついてるよ」



指先が髪をかすめ、のこめかみの近くを通る。
一瞬で全身が熱を帯びた。
鼓動が暴れ、手足の感覚が遠のく。
何が起きているのか、自分でもわからなかった。


五条は何事もなかったように花びらを摘み取り、の目の前に見せた。



「ほら、きれいだね」



透き通るような淡い桃色の花びら。
まるで自分の頬まで、同じ色に染まっていると見抜かれたみたいで。
は視線を逸らすしかできなかった。


五条は花びらをひらりと飛ばし、中庭の桜の木を見上げた。



「もう、春も終わりかー。は今年、花見した?」



他愛もない会話。
その緩さが、には余計につらかった。


先生は、何も変わらない。
変わってしまったのは、きっと自分だけ。



「……あ、そういえば――」



自分でも驚くほど不自然な声だった。
言葉の先を繋ぐために、必死に記憶を手繰る。



「野薔薇ちゃんと約束してたの、忘れてました」



何でもないふうに笑いながら、けれどその声はどこか上ずっていた。
五条が振り返るより早く、は立ち上がる。



「すみません、先に行きます!」



そう言って、ベンチから駆け出した。
背中越しに、五条が首を傾げている気配がした。


(……逃げた。だって、先生の隣にいるのが、もう耐えられなくて)


たどり着いたのは、校舎裏の階段だった。
昼の日差しが静かに差し込む。


壁に背を預け、は小さく息を吐く。


(……何やってるんだろ、私)

(先生、変に思ったよね……)


そう思うと、少しだけ涙がにじんだ。
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