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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第15章 「その悔いは花冠に変わる」


年のころは七、八歳くらいだろうか。
白いワンピースを着て、髪は肩までの長さ。
顔立ちはどこか儚げだった。
 

(……人間? それとも……)


私は急いで眼鏡をかけ直す。
けれど、彼女はぼやけたりもしないし、消えもしなかった。

 
(……消えない。完全に、視えてる)


まばたきを何度かしても、そこにいる。
焦ってメガネをもう一度外して、またかけて……
それでも、やっぱり。

 
(……い、生きてる?)

(眼鏡外しても見えるんだから、そういうことだよね)
 

そんなふうに頭が混乱してると――



「どうしたの?」

 

ふいに、女の子がちょっと心配そうに言った。

 

「えっ……あ、う、うん、ごめんねっ! ちょっとビックリしちゃって……」

 

慌てて口を開いて、ぺこっと頭まで下げてしまう。
でも女の子はきょとんとして、ただこっちを見てた。
 

(……会話できる、普通に)

(びっくりしすぎた……こわがりすぎ、自分)
 

「えっと……」



少し息を吸い込んでから、私はゆっくり尋ねた。

 

「こんな時間に、ひとりでここにいたの? ……何してるの?」

 

なるべく優しく、怖がらせないように。

 

「落とし物、しちゃって……探してたの」

「……落とし物?」

 

私は思わず聞き返す。

女の子は小さくうなずいて、ぽつりと続けた。

 

「……貝殻のキーホルダーなの。お母さんが買ってくれた、大事なやつ」

 

(……貝殻? キーホルダー……?)

 
その瞬間、昼間のことが頭をよぎった。
砂の上で見つけた、小さなキーホルダー。
 


「あっ……!」

 

私は慌ててポケットを探り、それをそっと取り出した。

 

「……これ、かな?」

 

手のひらに乗せたそれを、そっと女の子に見せる。
月明かりがちょうどそれを照らして、小さな貝殻がやわらかく光を返した。
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