第20章 「祝福に咲きしは、偽りの華」
「が可愛すぎて、僕のHPがゼロになりかけてるって話……」
なんとも情けない声でそう言って、柱にもたれかかったまま、顔を伏せる。
はぽかんとしたあと、耳まで真っ赤になって俯いた。
「な、なにそれ……」
それでも、口元はかすかに緩んでいた。
恥ずかしさと、嬉しさと、ほんの少しの安心が入り混じった、小さな笑み。
五条はそっと顔を上げ、彼女の横顔を盗み見る。
「……ほんとは、今日はただ隣で寝るだけのつもりだったんだけど」
囁くように言いながら、五条は唇をわずかに吊り上げた。
「これ以上可愛くされたら、僕、マジで勃っちゃう」
「っ……さ、さとるさんっ!!」
顔を真っ赤に染めたは、枕を掴んで思い切り五条に向かって投げつけた。
しかし――。
ふわり、と枕は彼の目の前で止まり、そのまま空気を滑るように床へ落ちる。
「……む、無下限……っ」
涼しい顔でタオルを首にかけ直す五条に、はふるふると肩を震わせた。
「ずるいですっ、術式、解いてください!」
「んー……」
五条はわざとらしく悩むようなそぶりを見せたあと、いたずらっぽく笑う。
「じゃあ……が、もうちょっと近くに来てくれたら、考えてあげてもいいよ?」
「……!」
わずかに頬を膨らませたが、ぷいと顔を背けながら返す。
「……その手には乗りません」
その言い方が可愛くて、つい五条が吹き出す。
もつられて笑ってしまい――
ふたりの静かな夜に、やわらかな笑い声が重なった。