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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第15章 「その悔いは花冠に変わる」


沈黙が落ち着いたころを見計らって、私は小さく口を開いた。

 

「……あの、他の住人の方は、“夜に子供の声が聞こえる”とおっしゃってましたけど……そういうの……聞いたことありますか?」

 

男は煙をゆっくり吐き出してから、わずかに片眉を上げた。

 

「俺はないよ。……少なくとも、耳にしたことはないな」

 

そこで、男の目つきが変わった。
まるで、こちらを試すように――あるいは、不審を抱くように。

 

「つーか、おたくら……どうして今さら、何年も前の事故なんか調べてるんだ? 警察だって、“ただの事故”ってことで処理してんだろ?」

 

投げられた問いに、私は思わず言葉を詰まらせた。



「え、えと……それは……」

 

戸惑いかけたその瞬間、隣にいた水原さんがすっと一歩前に出た。

 

「――大学の研究でして」

 

落ち着いた声だった。

 

「事故現場と心霊現象の関係について、民間伝承をもとにした調査をしているんです。ご迷惑でなければ、現場の状況も少し拝見させていただければと」

 

男は無言のまま煙草をくゆらせてから、ふっと鼻で笑った。

 

「……そうかい。まあ、好きにすりゃいいさ」

 

それだけ言って、男は背を向けた。

 

「今日は、ありがとうございました」

 

水原さんがそう言って軽く頭を下げる。
私も続けて一礼し、二人でその場を後にした。


男の家から少し離れたところで、水原さんが足を止めた。



「……あと数軒聞いたら、現地を確認しましょう」

「……はい」



私も静かに頷いた。
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