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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第14章 「その花は、誰のために咲く」


「っ……!」

 

驚く間もなく、腕が回され、
後ろからぎゅっと抱きしめられていた。

 

「そんな顔してるのに、出て行かせるわけないでしょ?」

 

耳元に落ちた声が、心の奥に染み込んでいく。
優しくて、わたしを離さない強さがあった。


言葉にできない想いが胸をかき乱す。
それでも、先生の腕のぬくもりに触れていると、
張り詰めていた何かが、ゆっくりと溶けていくようだった。

 

「話したくないなら……無理に言わなくていいよ」

「……でも、そばにはいたい」

 

そう囁くと、先生はそっとわたしの肩に手を添えた。
そして、ゆっくりとその手に導かれるように、
体が振り向かされる。

 
正面から見つめられるのが、怖かった。
でも……目を背けることは、できなかった。

 
先生の目は、どこまでも真っ直ぐで、
まるで、わたしの痛みごと全部受け止めるような光を湛えていた。


そして――

 

言葉ではなく、そっと唇が重ねられた。
やさしく、静かに。
深く沈むようなキスだった。

 
わたしの頬に、あたたかい手が添えられる。
涙が零れそうになるのを、
唇が塞いでくれているような、そんな感覚だった。


今だけは、このぬくもりにすがっていたい。

 







そう願ったのに。

 

(……っ)

 

また、頭の奥で“何か”がざわめいた。
言葉にできない痛みと一緒に、“あの時の先生の顔”が滲み出す。

 
(……やだ)

 
頭の奥で、誰かが泣いているような音がした。
その声が、わたしの中の何かを揺さぶってくる。

 

「……っ」

 

先生のぬくもりが、急に怖くなる。

 

(やめて……やめて、これ以上……っ)

 

頭がズキズキと軋む。



「……っ、やめて……!」

 

思わず、先生の胸を押し返していた。

 

「……?」

 

先生の戸惑いを帯びた声に、ただ首を横に振るしかなかった。
頬を伝う涙が、止められない。

 
それを見た先生が、低く呟いた。
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