第14章 「その花は、誰のために咲く」
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「、最近なにかあった?」
先生に呼び出された理由は、すぐにわかった。
わたしは、黙ったまま執務室の椅子に腰を下ろす。
その向かいで、先生もソファにもたれながら、まっすぐこちらを見ていた。
「元気ないみたいだし、悠仁たちとも最近あんま一緒にいないでしょ?」
視線を逸らしかけた瞬間、先生の声が続いた。
「この前もさ、恵と……なんかあったよね?」
わたしは、思わず指先をぎゅっと握る。
そんなわたしの様子を見て、先生がふっと小さく笑った。
「あの時の呪霊、宿儺の指を喰ったみたいだね。そりゃあ、二級どころか特級になるわけだ」
「の判断のおかげで、あの怪我で済んだんだからさ。
恵、素直じゃないよね。活躍できなくて拗ねてんの、あれ」
少し冗談めかした声。
だけど、ちゃんとこちらに寄り添ってくれる響きだった。
それでも――わたしの胸は、ざわついたままだった。
「でも……伏黒くんの言う通りです」
言葉を飲み込みそうになるのを、無理やり吐き出す。
「私は……他の人を危険に晒しています。呪具の扱いもまだまだで……。
あのときだって、私がいなければ……伏黒くんが怪我することなんてなかったはずなんです」
声が震える。
そんなわたしの姿を、先生は黙って見つめていた。
そして、小さく、困ったような吐息が落ちる。
「」
名前を呼ばれて、わたしは顔を上げる。
先生の目は、真っ直ぐだった。
「……僕になんか、隠してる?」
その問いに、息が止まりそうになった。
「京都から帰ってきてから、なんか……おかしいでしょ」
「……それに」
少しだけ言葉が間を置く。
「僕のことも……ちょっと、避けてるよね?」
「……もしかして、あの夜のこと……嫌だった?」