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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第14章 「その花は、誰のために咲く」


――陽の差すリビング。
窓から見えるのは、静かな住宅街。
カーテンが風に揺れている。

 
そこにいたのは――

 
髪を後ろで結んだ、女の人。

 

「誰かを呪う暇があったら、大切な人のことを考えていたいの」

 

笑っていた。
どこか儚い、それでいて温かな笑み。



場面が変わる。
静かな病室。

 
白く塗られた天井。
カーテン越しの光が、薄く床に伸びている。


その奥――
ベッドには、先ほどの女性が眠っていた。
胸のあたりで、ゆっくり上下する呼吸だけが、
彼女がまだ“ここにいる”ことを、かろうじて証明していた。

 
伏黒くんは、椅子に座ったまま、動かなかった。
ただ、じっとその顔を見つめていた。
指先が、膝の上でかすかに震えている。

 

「……悪かったよ……ガキだったんだよ」

 

それはかすれていて、誰にも聞こえないような、心の奥の呟きだった。


伏黒くんの肩が、わずかに揺れた。



「……謝るからさ……さっさと起きろよ。馬鹿姉貴」



唇を強く噛みしめて、それでも彼は目をそらさなかった。

 
胸が、締めつけられる。
喉の奥が熱くなって、声も出なかった。


私の中に流れ込んでくる。


もう、どれだけ手を伸ばしても、
その声も、笑顔も、もう二度と――
触れることのできない場所へ行ってしまうかもしれない。


そんな不安に怯える毎日。
そして、何もできない自分を責める怒り。


わかる、 わたしも知ってるよ。
伏黒くんが、そこから目を逸らさない理由も――
どれだけ、それが苦しいかも。
 

だが、その痛みの奥で、
どこか、あの花の香りがした気がした。
優しくて、懐かしくて――
どこか、泣きたくなるような匂い。
 

(…どうして?)

 
呪霊の咆哮が廊下に響き渡り、現実に引き戻される。


(……こんなの見て、置いていけるわけないじゃん)


その瞬間、決意が定まる。
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