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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第14章 「その花は、誰のために咲く」


わたしは伏黒くんの腕をつかみ、反射的に斜め後ろへ跳ね退った。


その直後――



――ドゴォン!!



さっきまで伏黒くんがいた床が、まるで紙のように潰れた。
割れた木材と粉塵が舞い上がり、わたしたちの視界を一瞬覆う。



「……っ、あぶ……な……っ」



尻もちをついたまま、思わず伏黒くんの体を抱きかかえるようにしていた。
肩で息をしながら、恐る恐る音がした方に視線を戻す。


そこには、巨大な瘤のような腕が床にめり込み、まだぐずぐずと蠢いている。



「っ……だ、大丈夫……!?」

「……、おまえ……っ、何して……」



伏黒くんが痛みに顔を歪めながら、わたしを見上げる。



「助けてどうすんだよ……っ、お前が、巻き込まれたら――っ」



言葉の途中で、呻き声が漏れる。
彼の肩から血が滴っていた。


わたしは、必死に頭を振った。



「だって……このままじゃ……!」

 

そのとき――瘤が蠢いた。
さっきよりもさらに勢いを増し、腕を引き抜こうとしている。


伏黒くんは、奥歯を噛み締めた。
握った拳が震えている。


(このままじゃ、二人とも……)


息を荒くしながら、伏黒くんは膝をついたまま、拳に力を込めて――



「――鵺っ!!」




叫ぶように、喉から絞り出したその一言。

 
空気がひときわ震え、彼の背後に新たな式神――「鵺」が現れる。
鵺はその鋭い爪と羽ばたきで、即座に呪霊の腕へと食らいついた。
 


「今のうちに、一緒に帳の外へ!」

 

だが、伏黒くんは苦悶の表情を浮かべながら、それでも首を振った。

 

「……俺のことは、置いていけ。この怪我だと足手纏いだ」

 

その言葉に手のひらが震えているのが、自分でもわかった。
でも――

 

「よくないよ!!」

 

言葉が、自然と口をついて出た。


そう言って、掴んだ伏黒の手。
熱い。
傷からの血が、彼の体温を通して伝わってくる。
 

(鵺が呪霊の気を引いてる今なら……)
 

必死に引き寄せようとした瞬間――

 
視界が、揺れた。

 
(……また、こんな時に)

 
目の前が、すうっと霞んでいく。
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