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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第14章 「その花は、誰のために咲く」


「……え?」

「おまえが最近ちょっと様子おかしいの、俺も気づいてた」

 

伏黒くんは歩みを止め、こちらを見ていた。

 

「……あ、うん……。心配、かけて……ごめん」

 

言葉を探しながら、小さくうなずく。
まっすぐ見られるのが、どうしてだろう、少しだけ苦しい。


(……ダメだな、わたし。色んな人に心配かけちゃってる……)

 
平気なふりも、できてると思ってたのに――
自分の不器用さに、少しだけ情けなくなる。

 
(でも……大丈夫。誰かに触れたりしなければ、ふつうにしていられるはずなんだから……)


わたしは小さく息を吐いて、もう一度歩き出す。


(……足を引っ張らないようにしなきゃ)


そう自分に言い聞かせた、そのとき――






「……今の、聞こえたか?」



前を歩いていた伏黒くんが、急に立ち止まった。
わたしも足を止め、耳を澄ませる。


廊下に、静寂が落ちた。


ぎし――


床が軋む音。
でも、それはわたしたちの足音じゃない。


確かにどこか、別の方向から……
微かに誰かの足音のような、何かを引きずるような音が。


その音が、廊下の奥――
曲がり角の向こうから、じわりと、こちらに近づいてくる。


伏黒くんの目が鋭く細められる。

 

「……来た」



低く呟くと同時に、伏黒くんは印を結んだ。



「玉犬」



呼応するように、彼の足元から淡い光が走り、次の瞬間、白と黒の玉犬が現れた。
唸り声をあげながら前方を睨み、牙をむく。


わたしも、反射的に小太刀を抜いて構える。


ぎし――


また何かが、廊下を踏みしめるような音。


次の瞬間、廊下の奥――
暗がりの中から、そいつは現れた。
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