第14章 「その花は、誰のために咲く」
(……これが、“あの和歌”の意味……?)
それを、還す。
還るべき場所へ、眠るべきところへ。
それが、“花冠の魔導”――
でも、今はまだわたしの中に溜まっていくだけで、
どこにも還せない。
(この涙を、誰のために……どこへ、流せばいいの……?)
『おまえの心は知っている。あとは……従えばいい』
あのときの、悠蓮の声がよみがえる。
(……心に従うって、どうすればいいの……?)
見たくないものまで見えてしまう。
触れたくない痛みまで、自分の中に溶け込んでくる。
それをそのまま、優しく受け入れればいいの?
共感して、理解して、それだけで?
それとも――
全部、自分の中に抱えて、背負えばいいの?
(……わたしに、そんなことが……できるの……?)
他人の“悲しみ”を、わたしなんかが――
誰に向けるでもなく、声が漏れた。
「……誰か、教えて」
言葉にしなければ、苦しくて潰れそうだった。
「……ねえ、悠蓮……」
「どうして、わたしなの……?」
そう言ったとたん、こらえていた涙がまた滲んできた。
頬にひとしずく、音もなく落ちていく。
空を見上げると、
白い光が、まだひとつだけ――
青い空のなかで、そっと揺れていた。