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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第14章 「その花は、誰のために咲く」


***


ひとしきり泣いたあと、ようやく呼吸が落ち着いてきた頃だった。
ふと、目の前の空気がわずかにきらめいた気がした。


涙の膜の向こう、白い光がゆらり、ゆらりと空中を漂っている。


風もないのに、花びらのように舞いながら――
どこからともなく、静かに集まってくる。


光の粒は、わたしのまわりにふわりと浮かんで、
やがてそっと、胸の奥に、溶けるように消えていった。


(……これは……)


見覚えがあった。


――あの夢で見た、白い光。



「……花冠?」



あの、優しくて、温かくて、
でも、どこか悲しみを抱えたような光。



(……そういえば、あの和歌に……)



ふと、口をついて出るように、呟いていた。



『――はな かむり
 たまのをに ゆらぎしこゑよ
 よるの しづくに うつしゑを
 すくふは そよぐ まがれなる……』


(……“よるの しづくに うつしゑを”……)


それって、今わたしに起きてることなんじゃないかな。

夜の雫。
たしか、先生が言ってた。
「涙とか、悲しみのこと」って。


その雫の中に、映し出された“うつしゑ”――
それは、わたしじゃない誰かの記憶。
願いでも、声でもない。
ただ、そこにある……悲しみ。
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