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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第14章 「その花は、誰のために咲く」


「あ、五条センセー!」



虎杖くんが、教室の外に目を向けて言った。


(――えっ)


その名前に、心臓が跳ねた。
顔を上げかけて、でもすぐに伏せる。
見られたくなかった。こんな顔、こんな状態――



「センセー、ちょっと!」



虎杖くんが手を振りながら、廊下に向かって呼びかける。


廊下の向こうから、足音が近づいてくる。
姿を見せたのは、見慣れた黒の制服で目隠しの先生。



「どうしたの、悠仁?」

 

先生が、教室の入り口からひょいと顔を覗かせる。
その目隠しの奥の視線が、ふっとわたしに向けられた。



「、調子悪いみたいっす!」



虎杖くんがそう言うと、
先生はわたしの顔を見て、わずかに眉を寄せた。

 


「……、風邪?」

 

その問いかけに、横から野薔薇ちゃんが口を挟む。

 

「急に泣き出したのよ? 授業中に。びっくりしたわよ」



わたしは咄嗟に否定しようとして、でも言葉がうまく出てこない。
ごまかすように笑みを作りながら、かろうじて声を出した。
 


「……目にゴミが入っちゃっただけで。なんでもないよ」

 

その言い訳が明らかに苦しいことは、自分でもわかっていた。
でも、誰にも知られたくなかった。
自分の中に“誰か”が入ってくるなんて――こんなこと。



「……なんでもないわけ、ないでしょ」



野薔薇ちゃんは眉間にうっすらと皺が寄っていて、
目元には明らかな苛立ちと心配がにじんでいた。



「最近さ、様子おかしいじゃん。急にぼーっとしたり、泣いたり……」

 

野薔薇ちゃんの目がまっすぐこちらを見据えていた。
わたしはたまらず目をそらす。
 


「んー、確かに顔色悪いね」

 

そう言いながら、先生がゆっくりと近づいてくる。
視線が、どこか探るようにこちらを見つめている気がした。



「ちょっと、熱あるかも」

 

そう言ったかと思うと、
先生の指先が、わたしの額へと伸びてきた。

 
ひやりとした手のひらが、そっと額に触れる。

 

その瞬間。


(……あっ――)

 
ぐらり、とまた視界が傾いた。


(……また……)
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