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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第19章 「夢に還らぬひと」


母親の目が、ゆっくりと細められた。

「私はもう一度娘に会いたかった。……そんな時、目の前に放り出されたロープが黒かろうが、白かろうが、腐っていようが、……掴んでしまうのが人間でしょ。」

の胸が、締め付けられる。

(この人は……“掴んでしまった”んだ。癒えない喪失の果てに、――道を踏み外した)

でも、それでも――

は、まっすぐに母親を見た。

「……こんなかたちで、“戻ってくる”ことを……
娘さんは、本当に望んだんでしょうか?」

母親の目が、ふと、微かに揺れた。

けれど――

「それは、あなたの“正しさ”でしょ?私の“幸せ”とは、違うのよ」

そう言って、母親はゆっくりと立ち上がった。

「しばらく、そこで大人しくしていてちょうだいね。……この子に、あなたを嫌いになってほしくないの」

その言葉に、は目を見開いたまま、強く唇を噛みしめた。

「……拘束を、解いてください」

静かな声だった。
けれど、その声には確かな意思が宿っていた。

母親はふと振り返り、目を細めて微笑んだ。

「ごめんなさい。それは、できないわ」

「私は、あなたの敵じゃない。娘さんのことも、できる限り穏やかに――」

「だからこそ、ダメなの」

母親は、まるで優しさのベールで残酷さを包み隠すように言う。

「あなたの“正しさ”は、きっとこの子を否定してしまうから……
だったら、せめて好きなままでいてほしいのよ。ね?」

それは、狂気にも似た――切実な愛情の形だった。

その時、暗がりの中で、娘がぴくりと反応する。

かすかに首を傾げる仕草。
何かを感じ取ったように、顔をへ向け直す。

そして、ゆっくりと――
その小さな手が、の胸元へと伸びてきた。

触れた瞬間だった。

「――ッあ……!」

の体が、びくんと跳ねた。

内側で、何かが暴れだす。

心臓でも、呼吸でもない。
もっと深く、もっと根源にある“何か”が、掻き乱されていた。

(これ……私の、“魔導”?)
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