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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第13章 「咲いて、散って、また咲いて**」


「……っ、どうして、わたしの名前を……?」



問いかけた声が、かすかに震えていた。

 
けれど、その人はただ静かに微笑んだまま、
ゆっくりと手を伸ばしてきた。

 

「……やっぱり」

 

その声は、どこか懐かしさを帯びていた。


そして、ひんやりとした指先が
わたしの頬に触れた。

 
びくっと肩が揺れる。
でも、動けなかった。

 

「綺麗だね、」



そう呟いたその声は、まるで恋人に語りかけるように、甘く、穏やかで――

 

「昨夜は、あの男に……」

 

間を置き、静かに続ける。

 

「どんな風に愛された?」
 



(……っ!)

 

頭の奥で、警鐘が鳴る。
心臓が跳ね上がった。

 

(……なんで……っ)

 

どうして。
どうしてそんなことを――


ぞくっと全身に冷たいものが走った。

 

「やめて……っ」

 

わたしは咄嗟に、その人の手を振り払っていた。


一歩、後ずさる。
息が浅くなっていくのが分かった。

 

「あなた……誰なんですか……っ」

「五条家の方じゃ……ないですよね?」

 

やっとの思いで、そう絞り出す。

 

すると、彼は少しだけ顔を傾け、楽しげに目を細めた。

 

「忘れるなんて、ひどいな」

 

やさしい声なのに、なぜか背筋が冷たくなる。

 

「……昔は、もっと僕のこと……呼んでくれたのに」

 

言いながら、その人はまた一歩、静かに近づいてくる。


けれど、今度は頬に触れることはなく、
ただ、わたしの目をまっすぐに見つめた。

 

「諏訪烈」

 

その名を、丁寧に、ゆっくりと告げた。

 

耳に届いた瞬間、なぜか心臓が縮まった気がした。

 
(……すわ、れつ……?)

 
口の中で、そっとその名前を繰り返す。

 
――知らない。

 
そんな名前、聞いたこともない。
なのに。


頭が、心が、魂のどこかが、拒絶するように恐れていた。
足の指先まで、ひやりと凍るような感覚。
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