• テキストサイズ

【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第13章 「咲いて、散って、また咲いて**」


「こんにちは」



 
背後から、不意に声がした。
驚いて振り返る。

 
そこに立っていたのは、一人の青年だった。

 

銀色の髪が風に揺れていた。

 
男の人だった。
年は……二十代、くらいに見える。
でも、その顔は――

 
(……きれい……女の人みたい)

 
思わず、そんな言葉が浮かぶくらい。
あまりに整っていて、まるで絵の中から抜け出したみたいだった。


肌は透けるほど白くて、目元はどこか涼しげで。
でも、不思議と冷たさは感じなかった。
 


「……こ、こんにちは」

 

慌てて声を返す。
するとその人は、やわらかく微笑んだ。

 

「ここで、何してるの? もしかして……迷子?」

 

問いかけられて、言葉に詰まる。
 

(五条家の人……かな?)

 
そう思った。
この敷地の広さを考えれば、
きっと親戚とか、身内の誰かだろう。

 

「えっと……散歩してて、そしたら……道が、わからなくなっちゃって……」



しどろもどろになりながら言い終えると、
その人はまた微笑んで――
今度は、私の横にある花を見つめた。

 

「……その花に、呼ばれたのかな」

 

まるで、それが当たり前のことみたいに言うから、思わず黙ってしまう。

 
(……呼ばれた、って……)

 
なんで、そんなこと知ってるの?
私がさっき、あの花に引き寄せられたことを。

 
わからない。
でも、聞けなかった。

 
その人が、静かに一歩だけ近づいてくる。

 
目の奥が、少しだけぞくっとした。



「あ、あの……っ」

「あなたは……どうして、ここに?」

 

本当はもっと聞きたいことがあったが、
なんとか言葉を絞り出す。


けれどその人は、わたしの問いに直接は答えず、


 
「僕はね、この奥に――会いたい人がいて」

 

そう言いながら、そのまま花の向こうを指さす。
そこには、木々がやわらかく影を落とす、細い獣道のような道が続いていた。

 

「……一緒に来る?……」

 

その人が、わたしの名前を口にした。
一瞬、時間が止まったような気がした。
/ 442ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp