• テキストサイズ

【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第13章 「咲いて、散って、また咲いて**」


理屈じゃない。


本能のどこかが、はっきりと叫んでいた。

 
――この人に、近づいちゃいけない。







そう思った、その瞬間だった。

 

ポケットの中で、ブルッ……と震える感触があった。
 

反射的に手を伸ばし、ポケットからスマホを取り出す。

 
画面には――

 

先生の名前。


(……先生……)

 
ホッとしたのも束の間、顔を上げたその時だった。

 
(……えっ……)

 
さっきまで、目の前にいたはずのあの男の姿が、
まるで霧のように、跡形もなく消えていた。


さっきまで、すぐそこにいたはずなのに。


(……どこ、行ったの?)

 
さっき触れられた頬が、うっすらと冷たい。
現実感が、曖昧になる。


(……幽霊……? そんなわけ、ない……)


スマホの画面は、まだ着信中のまま灯っていた。

 
そっと通話ボタンを押した。
耳にあてた瞬間――

 

『……?』

 

私の好きな低い声だった。
優しくて、少しだけ心配そうで。
 

その声を聞いた瞬間、呼吸がやっと落ち着いた。



でも。

それでも、わたしの耳にはまだ、
あの男の囁きが、微かに残っていた。


名前を呼ばれたあの感覚。


初めて聞いたはずの、あの名前。


なのに、どこか懐かしくて、
それ以上に、恐ろしかった。



風がやさしく吹き抜ける。


目の前の、あの白い花が――
ひらひらと、まるで呼吸するみたいに揺れていた。


……まるで、見ていたように。


わたしと、あの男とのすべてを。
その奥底の感情さえ、見透かしていたような気がして
息を飲む。

 


――諏訪烈

 


耳の奥に残った声が、静かに何度も反響していた。

 

 

その名が、何を意味するのか。




まだ、わたしは知らなかった。








この出会いが、どれほど深い“呪い”を孕んでいたのかを――
/ 442ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp