第21章 「可惜夜に眠る 前編**」
「野薔薇ちゃんより、私が怪我する方が……チームとしては、いいのかなって」
「マッチポイントも取れましたし。怪我の功名……みたいな」
「……」
先生の手が、ぴたりと止まった。
蒼い瞳が至近距離で私を見つめる。
その瞳が何を感じているのか、私にはわからなかった。
ただ、私の言葉がその奥に沈んでいくのを感じた。
先生はふっと短く息を吐くと、ガーゼを傷口に当ててテープで固定した。
「……あんまり、心配させないでよ」
「あ……すみません」
思わず頭を下げる。
先生に、心配かけちゃった……
でも……このくらいの怪我なんて、よくあるのにな。
「よし、終わり。明日、硝子が来るからちゃんと診てもらおうね」
先生が救急箱を閉じる。
そして、顔を上げて、こっちをまじまじと見ていた。
「……あ、あの?」
戸惑って声をかけると、先生の目がふっと細まった。
私の水着のフリルをちょん、と指先で弾く。
「水着、かわいいね」
「ひゃっ……!?」
不意打ちの言葉と指の感触に、私は慌てて両腕で胸元を隠した。
そばに置いてあったラッシュガードに手を伸ばす。
早く、早く着ないと。
この視線に晒され続けたら、心臓が持たない。
「……っと」
けれど、ラッシュガードを掴もうとした私の手首を、先生の大きな手が捕まえた。
「なんで隠すの?」
「だって……恥ずかしいし……!」
「似合ってるのに。せっかく可愛いんだから、よく見せてよ」
先生は私の手首を引いてラッシュガードから遠ざける。
抵抗しようとしても、先生の力には敵わない。
「あんまり、見ないでください……!」
「はは、今さら?」
先生が喉を鳴らして笑った。
手首を引き寄せられ、先生の顔がぐっと近づく。
「いつも僕の前で、もっと恥ずかしい格好してるくせに」
「~~ッ!!」
一瞬で、先生との記憶が蘇る。
乱れたシーツ、熱い吐息、先生に求められるままに喘ぐ自分。